ひとつ前の記事で、表紙だけを紹介させていただいた『SOHO翻訳者の仕事部屋』(まな!著/トライアリスト東京)。
まな!さんは、私が受講している医薬翻訳講座「トライアリスト」の大先輩です。
文系出身、専門知識ゼロのまな!さんがトライアリストで学習し医薬翻訳者になるまでの道のりから、在宅翻訳者の仕事の実情、翻訳業界・翻訳会社事情(裏事情?)まで、興味深くて役立つことや、とても大切なことがこの一冊にぎっしり詰まっています。

読み始めたらほんとうに止まらないよ! 一気に読んでしまいました。
会社帰りの電車のなかでそれを読み終えた私は、電車を降りてから家まで20分歩くにも、何だか興奮して走り出したくなるような気持ちになりました。
一度読み終え、もう一度読み返しているいまでもやはり、翻訳に対するさまざまな感情が心の底からわき起こってきて、それをここに感想としてうまくまとめることができそうにないのですが・・・少し、書いてみようと思います。
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この本は、まな!さんのブログ『SOHO翻訳者の仕事部屋』を書籍化したものです。トライアリストに入会し学習を開始したころから私はこのブログをたびたび訪問し、記事を何度も読み返していました。
そのときは、まな!さんのブログのことを、(トライアリストのこと、辞書のこと、学習方法のこと、仕事とお金のこと、翻訳に対する考え方など)、「具体的に」自分にとって有益な情報がいっぱいで、学習を続けていくうえでの力強い味方のような存在だと思っていました。
ところが、1冊の本として今回読ませていただいたところ、ブログで興味のある記事を見つけては飛び飛びに読んでいたときにははっきりとは見えなかった(私が鈍感だから、ですが)あるひとつの大切なものを発見することができたのです。
それは、この本の最初から最後まで、すみからすみまでに貫き通されているまな!さんの「とてつもなく強くて頑丈な一本の筋(←私が感じたままを表現すると、です)」でした。どんなことが起こったって、少しもゆらぐことなく、ましてや切れることなんて決してありえないものです。
それはたとえば、翻訳の品質に対する責任感とか、翻訳に対する考え方や情熱だとか、そういうことだけに関わるものではありません。もっともっと広い・・・、
「翻訳者として生きていくこと、まるごと」です。
ある理由から、収入の多くの部分を占めるほどおつきあいのあった大手翻訳会社との縁を自ら切ったというまな!さんのエピソードが書かれていましたが、このようなエピソードも含めて、「翻訳会社 対 個人」のやりとりのなかで起こるさまざまな問題に対し、まな!さんのように筋を通して仕事をすることは、ちょっとやそっとでできることではないと思います。
自分がそのような状況に陥った場合を考えてみても(仕事をしていると仮定して、です)・・・。
まな!さんのような行動に出る勇気があるのかと、いまの自分の胸に聞いてみたところ、「正直言ってそのような勇気はないかもしれないなぁ・・・」と、私の胸は小さな声で何とも自信なさげに答えました。
そう、いまの時点では、自分に自信がないんですね。そこまで言い切れないんです。
でも、思います。いまはまったく仕事をできるレベルにはない私だけど、いつか仕事ができるようなときが来るまでには、筋だか骨だか幹だかはわからないけれど、頭のてっぺんから足の先まで、その何者かを一本、貫き通してみせようと思います。そういうものが確立していないうちは、まだ自ら仕事を求めてはいけないのだと思います。
それだけの実力と自信をつけるということ。翻訳の品質についてはもちろん、個人事業主として生きていくことについても。
それは、翻訳者として、人とやりとりをしながら「自分が」気持ちよく仕事をしていくためであるという以上に、人や社会に迷惑をかけないために最低限必要なことなのだと思いました。
ご自身のエピソードをあるがままに淡々と綴られているまな!さんの語りは一見、厳しいようにも受け止められそうですが、私にはそうではなくてその真逆、とてもあたたかいものに満たされているように感じました。
私のように翻訳者をめざして学習されている人をはじめ翻訳にかかわる仕事をされているあらゆる方々にぜひ、読んでほしい。じゃなくてほんとうは、翻訳者にかぎらず世の中で働くあらゆる人が読んでもいい、読んでほしいと強く思います。
トライアルに関することでは例えば、「トライアルに落ちないコツとは」「合格率1%~2%の超難関?」「本当に『合格=受注ではない』のか」などについて書かれていますが、その答えを知ると、なるほどそういうことだったのかと深く納得でき、翻訳を仕事にするまでの自分の姿勢や取り組み方がまた変わってきます。
少しでも気になられた方、読んでみたいと思われた方はぜひ!こちらをご覧ください。
まな!さん、ほんとうにありがとうございました!
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この本を読ませていただき、まだまだあふれ出る感情はいっぱいなのです。
今日はこの辺でせき止めておきますが、翻訳に関することをまた少しずつ、書いていきたいと思います。
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