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2010年10月17日 (日)

大根おろしのように

先日友人と魚定食のお店へ行った。その辺りでも評判のお店のようで、店の外には数人の行列。外に貼り出してあるメニューを見て待つことにする。定番のさば塩焼きやブリの照り焼きもいいけれど、そのほかにもいろいろあるね。煮付けもおいしそうだし、何にしようか・・・などと話していれば、行列なんてあっという間。

席につき、友人は銀だらのみそ焼きを、私は銀だらの照り焼きを注文。

料理が運ばれてきた。早速ひとくち・・・、おお、銀だらよ、なんておいしいんだろう! 甘くて程よくやわらかくて上品で、極上の味がする。

友人と私はあまりのおいしさに感激し、店を出たあとも魚のおいしさについて話し合った。そこで、あの銀だらのおいしさは、銀だらそのもののおいしさには違いないわけだけど、もうひとつ、決定的な存在があったことに気づいたのだ。それというのは―。

そう! 大根おろし。

魚の隣に添えられたそれに少ししょう油をたらし、なじませる。すると銀だらの甘みがよりいっそうひきたつのだ。あの大根おろしがなくては、私たちを感動させるまでには至らなかったに違いない。水分が多すぎてべちゃっと寝そべっている(私が家で作るとこんな感じ)のではなく、程よい水分を保ったそれは力強く凛とした姿で銀だらの脇に立っていた。

大根おろし。決して華やかではない役柄だけど、主役の脇でそっとひかえて待ち、ここぞという時に主役のよさを最大限に引き出す。でも決して彼女(または彼。性別不明)は脇役ではないと思う。こうして私たちの心に感動をもたらしてくれた彼女(または彼)の存在は大きい。魚となじんた時点で、彼女(または彼)も同時に主役になったに違いない。

美しい、大根おろし。私も大根おろしのようでありたい―。

***

ふゆのさくら     新川和江

おとことおんなが

われなべにとじぶたしきにむすばれて

つぎのひからはやぬかみそくさく

なっていくのはいやなのです

あなたがしゅろうのかねであるなら

わたくしはそのひびきでありたい

あなたがうたのひとふしであるなら

わたくしはそのついくでありたい

あなたがいっこのれもんであるなら

わたくしはかがみのなかのれもん

そのようにあなたとしずかにむかいあいたい

(後略)

詩集『比喩でなく』 より

***

あなたが旬を迎える秋刀魚であるなら

わたしはその傍らにひかえる大根おろしでありたい

―秋刀魚のおいしいこの季節。こんなことを思いながら・・・。

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コメント

どんぐりさん、こんにちは!
焼き立ての銀だらに大根おろし・・・読んでいて、おいしさが
口いっぱいに広がりましたhappy01

大根おろし、しょうが、柚子こしょう。
魔法みたいですよね!
わたしもそんな食卓の魔法が大好きです。

どんぐりさんとおいしいものを食べにいきたくなりました。

投稿: jasmine | 2010年10月21日 (木) 08時22分

jasmineさんがコメント第一号となりました!
とても嬉しかったです。ありがとうございます。
料理がお上手なjasmineさん、きっとたくさんの魔法をご存じなのでしょうね。
ぜひ教えてください。

私もjasmineさんと、おいしいものを食べながら、おいしいお話をしたくなりました。

投稿: どんぐり | 2010年10月21日 (木) 21時11分

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