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2010年11月27日 (土)

落ち葉 その1

***

落葉       草野心平

言葉なく。
鰯雲のまぶしい日には。
そよ風にのって華やかに。

唐松のさびた縫針が言葉なく。
ししししおちる。
おちて重なり。

ズミやカエデはひらひらひらひら。
言葉なく。

晴れた日の天はセルリアンブルー。
曇は鉛。
明暗の縞模様になって秋はふかまる。

林のなかを。
時間がいそぎ。
半年生きてきたもみじ葉たちは。
最後の別れを告げようとする。

言葉なくそして未練なく。
枝々に別れを告げて地に落ちる葉っぱたちの。
未練のないその。
樹木の倫理の当然さ凛々しさ美しさ。

透きとおった沈黙の深みから沸く。

天然の。
金の竪琴。

『草野心平詩集(ハルキ文庫)より』

***

見上げればどこまでも透きとおるブルー。見下ろせば地面におしゃれな模様をつくる赤、黄、オレンジ。

いつの間にか、葉っぱたちはこの地面に舞い降りていた。
「言葉なく」、そして「未練なく」。

潔い、と思う。
その枝に生まれ緑の葉となり、日の光を浴びながら、そよ風にのって大勢の仲間たちと歌いながら、風雨に耐えながら、自分だけの色を作り出して体をしっかりとその色に染めあげた。
だから、いいのだ。

「今までありがとうございました。行ってまいります」

枝にそう告げ、あとは静かに舞い降りる。

枝のほうもまた、未練なく。
自分につかまっていたたくさんの子どもたちを手放すのだからすこし寂しい心地もするのだろう。だが、旅立っていくわが子の背中を静かに押してやる。「さあ、お行きなさい」と。

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