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2011年2月13日 (日)

あの子が母に(後編)

N美の出産が近づいたある日。Y子、I 山、私の3人は、N美に内緒で3人だけの会合を開いた。集合場所は、日本橋にある水天宮。安産祈願で有名なのだ。N美の安産をみんなで祈り、お守りを購入、出産をひかえた彼女に手渡した。

そしてN美は、2010年8月、ひとりの女の子を無事出産する。その名は「あや」。

*

年が明け、1月の終わりのN美の家での会合。I 山は残念ながら都合が合わず欠席だ。

5か月のあやちゃんは、なんだかもう堂々としていて、見つめられるこちらがそわそわしてしまうほど。しっかりとした強いまなざしがとても印象的だ。もうひとつのインパクトが、ほっぺ。赤ちゃんのほっぺって、ぷるぷるしていて何度でもさわりたくなってしまうものだけれど、あやちゃんのはまた格別。ものすごく、弾力があるのだ。やわらかなおもちと言うだけでは足りない、みずみずしいこんにゃく、とでも言えばいいのだろうか。とにかく、押したときのはねっ返りがとても強い。

Y子と私は、あやちゃんの強いまなざしに少々とまどいながらも、ほっぺに触れ、手に触れ、髪にふれ、抱っこさせてもらい、思い切りあやちゃんとふれ合った。

N美から、出産とそれまでの日々のこと、その後の育児などについてのお話を聞かせてもらう。出産に至るまで、おなかの中のあやちゃんやN美自身の経過にもいろんなことが起こり、心配になったり心が不安定になったりしたこともあったと言う。出産時も、あやちゃん、スルリと出てきたわけではなく、促進剤を使用したうえで帝王切開に至るという大変な難産だったそうだ。「この子になにかあったら」――無事に出てきてくれるまで、大きな決断を迫られることもあったり、周りからかけられる言葉に心が大きく揺れ動いてどうしていいか苦しんだり。

N美は、そうして、母となったのだ。もう、ただのN美ではない。翻訳学校の予習をちょっとおさぼりしてしまうN美ではない。あやちゃんを抱きながら母親にしかかけられない言葉をつぶやくN美が、とてもかっこよく見えた。素敵だよ、N美・・・。

「N美が母になるなんて、ほーんっと、大丈夫かなぁ」・・・N美が妊娠したことを知って一番心配していたのはほかでもない、I 山。今日は来られなかったけど、I 山、N美なら大丈夫だよ。私たちの想像をはるかに超えるほど(言いすぎね)、しっかりママやってる。

そんなふうに感動していたら、あやちゃんがちょっとぐずりはじめた。N美、おしめのぬれ具合をチェック。「あ、出たね~」。当然、そこでオムツ替えがはじまるかと思ったそのとき。

「うん、でも、もうちょっと頑張ろっか!」

・・・「えー!! そこまでさわっといて、替えないの!!」「替えようよー!」

Y子と私が訴える。あやちゃんも、替えてもらえないことがわかってその泣き声を大きくする。

「じゃあ~、替えるか。よかったねぇ、あや。ママと二人だと替えてもらえないもんね」

「あやちゃん、もっともっと泣き叫ぶべきよ!」 Y子と私はあやちゃんに吹き込む。

せっかく素敵なママになったN美を見てうっとりしていたというのに・・・、残念だったわね、N美!
でも、これくらいおおらかなママのほうがいいのだと思う。赤ちゃんにとっても、ママ自身にとっても。(子育てしたことないのに、えらそうにごめんなさい)。ママがバタバタせっかちな気持ちでいたら、赤ちゃんだって落ち着かない。ずっとママのおなかの中で過ごしてきた赤ちゃんには、外に出てからも、ママの気持ちをものすごく敏感に感じ取っているように思うから。

うちの母も、私をひとりおうちに置いたままスーパーなどに行ってしまう放任主義っぷり。帰ってくると、私の寝ている向きが180度回転、頭と足が逆向きになっていたことがよくあったと言う。オムツが濡れて、気持ちわるいのだ。それでも泣きもせず、おとなしく母の帰りを待っていた私、赤ちゃんのころから、何て親孝行な娘なんでしょう!(書いててはずかしくなってきた)。

***

 歌   新川和江

はじめての子を持ったとき
女のくちびるから
ひとりでに洩れだす歌は
この世でいちばん優しい歌だ
それは 遠くで
荒れて逆立っている 海のたてがみをも
おだやかに宥めて(なだめて)しまう
星々を うなずかせ
旅びとを 振りかえらせ
風にも忘れられた さびしい谷間の
痩せたリンゴの木の枝にも
あかい 灯をともす

(後略)

『新川和江詩集』 ハルキ文庫

***

ひとりでにささやかれるN美の言葉、なんて優しいんだろうって思ったよ。あのN美が!(←だから、言いすぎだって)

あやちゃん、そしてN美ママのますますのご成長、楽しみにしています!

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コメント

あの銀座告白事件にはほんとビックリしたね(笑)
そして、あのN美が立派な母親になってて本当に感激したよ!人は母になると変わるんだね〜(言い過ぎ?N美ゴメン(笑))
いろいろあって大変だった出産。それを乗り越えたからこその頼もしい表情なんだね。
私もいつか、わが子を授かり愛に満ちた母になりたいと、羨ましくなったよ☆

※前編では他人のふりしてコメントしたけど、後編で偽るのは無理でした(笑)

投稿: ミクリ | 2011年2月14日 (月) 21時48分

ミクリさん、正体を明かしたわね!

本当、N美のあの表情、I 山に見せてやりたかった!
立派な母親だと思わせてくれたN美だけど、やっぱりN美はN美。これからも、N美をやさしく厳しく(←これはI 山の役目)見守っていこうね。

投稿: どんぐり | 2011年2月14日 (月) 22時32分

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