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2011年2月12日 (土)

雪が降るとなぜか…

雪が降ると、なぜ、だれかにそれを伝えたくなるのだろう。

「うわぁ~、雪だ!」

雪が降っていることを確認した瞬間、「ねえ、見て見て! 雪だよ!」と、自分のものでもないのに、なぜだかだれかに見せびらかしたくなる。

 ♪ 今 君がこの雪に気付いてないなら 誰より早く教えたい 心から思った 
                                  槇原敬之 『北風』より ♪

ね、ほら、そうでしょ?

うちの母も例外ではない。昨日の朝一番に、私にメールをくれたのだ。

『今日は雪。寒いから気をつけて。母』 

母は頻繁にメールをくれるわけではない。電話もない。どうしても必要なときに必要なことだけを報告し合う、という感じだ。遠くにいる娘を思い、「最近どう? 元気にしてる?」などと電話してくることもまったくない。なにしろ母との電話で最も記憶に新しいものといえば、「あんたが前に使ってたファンヒーターの説明書、どこにある?」 という唐突な質問、それだけなのだから。

そんな母がメールをくれたのだ。そんな母をも動かす雪の力ってすごい。

しばらくして、姉からも。 『2月の雪は、粒が大きいな』 
夕方には、『雪降ってるか。こっちはやんだ』 と。

そう遠くに住んでいるわけではない友人とも、「そっちはどう?」と雪の様子をたずね合ってみる。

***

  二月の雪   新川和江

空のおくには
とてもたくさんの
小鳥がかわれています
ガラスみたいに
からだがすきとおっていて
羽だけが白い
つめたぁい小鳥

その羽を
だれがこんなにむしったのでしょう
春の服に
ころもがえさせるため?
それともほそいくちばしで
神さまのだいじな木の実をつついたのを
こらしめようとして?

あとからあとから 落ちてくるのを
しぃんとした気持で わたしは見ています
あとからあとから 落ちてゆくのを
かなしげに見つめている目が 空にもあります

『新川和江 詩集』 ハルキ文庫

***

雪降ったね! の報告を済ませ、今度はひたすら、降り続いている雪を眺めてみる。

ひらひらひらひら舞い落ちているのは、あれは小鳥の羽なのだ。どこもかしこも真っ白で穢れのない一枚一枚が地上を白く染め、ふわふわのじゅうたんをこしらえていく。

思わず「雪だ!」と声に出してしまったような嬉しい気持ちが、徐々に変化していく。小鳥の体から剥がれおちた羽が音を立てることなく降り積もっていくのを見ていると、自分の心の奥にある何かがむしり取られていくような気さえしてきてもの悲しく、降り積もるその雪と同じように、私の目からもあとからあとから涙がこぼれ落ちていく(どこまでが本当でしょうか)。

小鳥は春の服にころもがえをしたはず!  桜色かな。それともおひさまのような明るいオレンジかしら。

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