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2011年3月 4日 (金)

沈丁花の花、ひらく

帰り道。歩いていたら、冷たい空気に混じって何かがふっと香ったような気がした。思わずひきかえしてその香りのもとを確かめる。ああ、やっぱり! 期待どおり、そこにいてくれたのは沈丁花の花。白と赤紫色に染められた小さな花が集まってひっそりと咲きつつも、ここにいるよとでも言うように甘く品のよい香りを放つ沈丁花。

秋のきんもくせいと同じように、春の沈丁花も、ある日突然香り出す。昨日今日ととても寒い日だったのに、それでも頑張って咲いてくれたのだ。

ここ数日、冬の厳しさを乗り越えれば春はきっと来る、なんてことばかり書いていて、いいかげんくどいよなぁと自分でも思っているのだけど、でも春がぐんぐん近づいていることが嬉しくてついまた書いてしまう。一気に桜のつぼみが開いて風景も人の動きもにぎやかになる、それを眺めるのももちろん好きだけど、じわじわと近づく小さな春の訪れを、目で、香りで、肌で、耳で、触って確かめていくのがとびきり嬉しくてたまらない。

鼻のなかに覚えた沈丁花の香りを楽しみながら横断歩道をわたり、両側に家々が建ち並ぶ細い路地に入る。すると今度は、どこのお宅からか夕飯のいい香りがただよってきた。こっくりとした濃い味付けの・・・これは豚キャベ味噌炒めだな! おなかぺこぺこ食いしんぼうの私、こういう香りをかぎわけるのも得意なのだ。

春、春、春が待ち遠しい! ということばかり言っていると、まるで冬をわるものにしているようではないか。いやいや、そうじゃないよ。大好きな冬の青空、純白の雪。何よりも、厳しく長い寒さのなかにこそ、冬のよさがある。(ってことを言っておかなきゃあまりに冬がかわいそうではないか)

***

 もうすんだとすれば   まどみちお

もうすんだとすれば これからなのだ
あんらくなことが 苦しいのだ
暗いからこそ 明るいのだ
なんにも無いから すべてが有るのだ
見ているのは 見ていないのだ
分かっているのは 分かっていないのだ
押されているので 押しているのだ
落ちていきながら 昇っていくのだ
遅れすぎて 進んでいるのだ
一緒にいるときは ひとりぼっちなのだ
やかましいから 静かなのだ
黙っているほうが しゃぺっているのだ
笑っているだけ 泣いているのだ
ほめていたら けなしているのだ
うそつきは まあ正直者だ
おくびょう者ほど 勇ましいのだ
利口にかぎって バカなのだ
生まれてくることは 死んでいくことだ
なんでもないことが 大変なのだ

『かんがえる』 まどみちお 長新太 絵 理論社 より

***

暗いことっていいよね! なんてことを言う人はなかなかいないと思う。明るいほうがいい、そうに決まっている、と思う人が多いと思う。でもこの詩を読むと、暗いことっていいことなのかと、暗くてもいいのかと、いや、暗いからこそいいのだと思える。冬があるからこそ、春があるのだ。春には絶対に、冬が必要なのだ。

明日もまた、小さな春を見つけたいな!

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