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2011年7月 7日 (木)

いい便を出すためには

今日は七夕。星空を楽しみにしていたけれど、残念ながらくもり空。でも、見えないけれど雲のうしろにいてくれるお星さまに向かってちゃんと願いごとを唱えました。

今日、もうひとつ楽しみにしていたことがあった。家に帰り郵便受けを見ると、ちゃんと届いてたよ! 『メディカルトリビューン』。メディカルトリビューンは、医療従事者向けの医学新聞。少しだけ庶民向けのような親しみやすい記事もあるけど、それ以外は専門用語と特有の文体で書かれた専門的な話題がほとんどで、一生懸命調べない限り私にはさっぱり理解できない内容である。

でも、医薬翻訳を勉強しているいまの私は、このようなものを読むのが面白くてしかたない(医薬翻訳をやっていなかったら、絶対に近づこうとは思わない文章だけれど)。内容がどうというよりも、読んでいる文章そのものが一気に体に吸収されていくような感じがとても気持ちいいのだ。

この私が、お医者さまなどそれはもう高度に専門知識をお持ちになり、何十年もその職に携わっている偉大な方々が読むためのものを訳すということは、考えてみればとても恐ろしいことである。どれだけ勉強しても、医薬翻訳者にはなれないのではないかと、時々途方に暮れて真剣に落ち込む。

でも、できるはずだと思いなおす。文体を学ぶことが大切だとおっしゃる先生の言葉を思い出す。とにかく多くの文章を読み自分のなかにとりこんで、書けるようになりたい――。通信講座の課題をやりながら読むと、「あ、こう書けばいいのか!」「これは、こういう訳語にすればいいわけだ!」と、文章がするすると自分のなかに入り込んでくる感じがしてとても楽しい。

*

ずっと前、谷村新司さんがテレビでこんなようなことをお話していた。

谷村さんは、ふだん音楽を聴かないのだそうだ。(えぇ?なんで!!)

理由は、ほかの人の音楽を聞くと、自分が曲をつくるときにそれが出てしまうから。

(それを、うん。っと・・・。ちょっと言いにくいけど、人が食べ物を食べて最後に出すもの、つまり「便」にたとえていました)

だから、音楽ではなくそのほかのいろんなこと・・・例えば本を読んだり映画を見たり、そういうところからいろんなことを吸収してこそ、いい便(自分の音楽)を出すことができるのだと、おっしゃっていました。

なるほど~! と思った。けれど、すごいなぁ。谷村さんの便は、ほかの人の便から作られたわけじゃないんだ。ほかの人の便じゃなく、そのほかのいろんなものをいっぱい食べて、腹のなかで消化吸収して、自ら作り出された便なのだなぁ。

翻訳について考えてみると、谷村さんの例とは少し異なるのかもしれないなと思った。私がやろうとしていることは、ずばり便そのものを食べること(あぁ、こんなこと書いてたらますますヨメに行けなくなるがね・・・。でも谷村さん論だからしかたないのです)。それでも、便を食べればそれで万事うまくいくというわけではなく、自分のなかにしっかり吸収して、今度はそれを自分のオリジナル便としていつでもスルリと出せるようにならなくてはならないのだ。

そしてもちろん、便だけではなくてそのほかいろんなものも食べたいし、食べなくては翻訳者にはなれない。あくまでも便は主食にすぎない。実務翻訳の場合は全体の食事に対する便の割合も多いのかもしれないけれど、出版翻訳の場合はそれよりもさらに、いろいろなものを食べることこそ大切なのかもしれない(欲張りですが、いつか、いつか、出版翻訳もやりたいのです)。

いい便を出すには、食物繊維も必要だし、乳酸菌飲料やプロバイオティクスヨーグルトで腸内環境を整えてやることも必要だし、適度な運動やストレスをため込まない生活ができるようにも気をつけなければならない。

いろんなジャンルの本を読む、美術展に行く、音楽を聞く、映画を見る、散歩に行く・・・また、特別なことではなくても、いろんな人と関わっていろんな話をする。そういうことを、もっともっと増やしていきたいと思う。

まずは、今日から1年間強制的に送られてくるメディカルトリビューンをしっかり食べるとともに、日々を工夫して楽しみながら、いつか自分の言葉を無理なく気持ちよく出せるようになるまで修行をしていきたいと思います。

(七夕さまの美しいストーリーがあるこの日に、便、便を連発してしまい申し訳ありませんでした。そして、翻訳修行中の身であるこのわたし、本物の翻訳者さんから見たらまた的外れのことを言っているかもしれませんが・・・そんなときはお許しくださいませ)

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