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2011年8月29日 (月)

夏が過ぎ去るまえに

つくつくぼうしの声はまだ聞こえないけれど、徐々に、夏が遠ざかっている気がする。

つい最近まで、午後7時にまだ昼のような明るさだった帰り道が、いまではもうすっかり暗闇だ。
虫の音も、はっきりと聞こえるようになってきた。

あまりにも暑い日と秋のような涼しい日がまだらにあらわれた今年の奇妙な夏も、まもなく終わろうとしている。

過ぎ去ってしまうのだと思うと、あんなに暑くて苦しかった日々もさみしくさえ感じられてしまう。
夏がまだここにいるうちに、もっと君を感じておかなければ、なんて。

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  あけっぱなした窓が青空だ

  見上げればこんなに広い空がある

空。夏にしか見られないこのどこまでも深いブルーを、白い雲が似合う青を、そしてどこまでもつづく広さを、もっともっと感じたい。

この俳句の作者は、住宅顕信(すみたく・けんしん)。彼は、骨髄性白血病にかかり、25歳の若さで亡くなった。創句期間は死の直前までの2年8カ月。
病気が発覚し、離婚。誕生したばかりの長男を引き取り、病室で育てたという。

その冷たい病室から、彼は一体どんな思いで、空を見上げていたのだろう。

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  若さとはこんなに淋しい春なのか

  淋しさは夜の電話の黒い光沢

  両手に星をつかみたい子のバンザイ

  抱きあげてやれない子の高さに坐る

この本を広げるたびに、あまりにも、痛々しくて、本を閉じてしまいたくなる。

彼が抱えていた淋しさは、推し測ることができない。私が彼の気持ちになることは決してできないし、浅い部分しか感じ取ることができないのかもしれないけれど、それでも光を見出そうとする彼の俳句には、心を打たれる。

  許されたシャワーが朝の虹となる

  お茶をついでもらう私がいっぱいになる

  地をはっても生きていたいみのむし

すべて、『ずぶぬれて犬ころ』俳句-住宅顕信 版画-松林 誠(中央公論新社)より

++

あともう少し、夏を、夏の広がる空の下を、熱い気持ちで駆け抜けたい。

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