医療関係のイベントなど

2012年6月14日 (木)

「私だけのハッピーエンディング」とがんのこと

月に1度ほど、がんについて学ぶセミナーに参加させてもらっています。

NPO法人主催のこちらのセミナー。大腸がん、胃がん、肺がん、乳がん、子宮がん、前立腺がん、膵臓がんなどなど、毎回テーマに沿った内容のお話を聞かせていただいているのですが、先週の土曜日は、ちょっと特別でした。

映画『私だけのハッピー・エンディング』を観て知るがんのこと

というテーマで、映画の上映と、がん体験者の方のトークショー&ミニコンサートが開催されたのです。

仕事にプライベートに忙しい毎日を過ごしていたキャリアウーマン、マーリーはある日、大腸がんであることを知らされます。がんに対する怖さを持ちながらも、根っから明るい性格のマーリーが、最後まで自分らしく生きようとする姿がとても印象的でした。家族や友人、恋人と、ぶつかったり近づいたり、ありのままのかかわりが描かれていました。

映画上映後、若くしてがんにかかった方々のお話を聞くことができました。自分ががんになったときの、まわりの人たちとのかかわりはどうだったのか。自分はどんな心境だったのか。

印象的だったのが、家族がほかのどんなことよりも優先して、自分と一緒にがんと闘ってくれたというお話。一方、友人や知り合いのひとたちの場合には、がんであることを告白したら、ちょっと距離をおかれるようになるなど、反応がさまざまだったのだそうです。

映画にも、そんな場面がありました。マーリーには、まもなく新しい命を誕生させる妊娠中の友人がいたのです。がんが末期であったマーリーは、自分らしく生きる道を選択し、積極的な治療を自らやめていました。新しい命と、死が迫っている命・・・。
マーリーと、その友人と、相手に対してお互いにどんな気持ちだったことでしょう。

*

最後に、若年性がん患者団体「STAND UP!!」の公式ユニット「カラーボール」のミニコンサートがありました。がん経験者のおふたりの、ギターのやさしい音色と透きとおるような歌声にうっとりと聞き入りました。

そして、今回は、セミナーの資料と一緒にこのようなものが配布されました。

Photo

LIVESTRONG――強く生きよう

と刻まれた黄色のリストバント(リブストロングリストバンド)。

プロのサイクリストであるランス・アームストロングが、がん患者の支援(これを購入すると募金になる)のために作成したものだそうです。彼も、がん患者だったのです。

*

現在では、2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなっているのだそうです。

今回の映画に登場したマーリーは、大腸がんでしたが、女性のがん死の第1位は大腸がんなのだそうです。そして、便を採取するだけでできる便潜血検査をすれば、死亡率は60%も減り、早期に発見されれば、90%は治るのだそうです。

健康診断、しっかり受けて、自分の体をきっちりみてあげてくださいね。

| | コメント (2) | トラックバック (0)
|

2012年4月28日 (土)

「病理」って?(日本病理学会 公開講座のお話を聞いて)

第101回 日本病理学会総会 市民公開講座へ行ってきた。現場でご活躍されている4名の先生方のお話とパネルディスカッション。とてもよかったです。

テーマは「我が国における最先端がん治療」。
診断・治療のキーワードは、「個別化」と「低侵襲」ということでした。

日本病理学会の公開講座であるので、「病理学」に関するお話が満載でした。

「病理」という言葉は、ふだんの生活では私にとってほとんどなじみがないものだ。「病気」や「病院」、「病状」や「病的な表情」などという言葉にはまったく違和感を感じないのに、「病理」ときた途端、理解しがたくとても難しいものに思える。

医薬の英文を日本語に訳すとき、「病理」という言葉を使うのがふさわしいと思われる文章がたびたび登場する。「病理学的に」「病理学的検査」・・・そのときは、文章のなかにある「病理」であるし、前後の文章の流れから意味をつかんだうえで「病理」という言葉を使っているのだけど、たとえば今日の講座の冒頭で司会者の方から「病理学ってなんでしょうか」と問いかけられたとき、その顔つきはぼんやりとしか浮かんでこず、情けないことに言葉できちんと定義することができなかった。

「病理学」とは、病気の成り立ちやふるまいを解明していこうとする学問。検体を調べ、治療に役立てようとするものである(と、教えてもらいました)。

昔、まだ病理診断がなかったころは、わるさをしているその存在が一体何であるのかわからないまま、「とにかく取り去る」ことが治療方法だったのだそうです。そうするしかなかったのだ。

それを考えると、病理学ってすごい! と思います。

細胞や組織を観察し、それがどういうものなのかを知る。良性なのか悪性なのか。大きさ、組織型、転移はあるのかどうか。
それをふまえて、次にどんな治療を実施するのかを決めるのだ。○○がんの○期(←進行度)の人にはこの治療を、というわけではなく、患者さんごとに実施できる治療は異なることになる。がん細胞はとても多彩で複雑で、場所や時期により性格も異なるものなのだそうです。

「病理医」(外科医、内科医、歯科医などの言葉はなじみがあるけど・・・)と呼ばれる方が、こんなふうにがんを観察し、詳細かつ個別的な病理診断を下しているのだ。私にとって病院の先生と言えばほとんど、診察のときに出会うただ一人の先生というイメージだ。風邪など軽い症状の病気であればそのイメージで足りるわけだけど、重い病気にかかったり、健康診断を受けたりするときなどに検体を使用するさまざまな検査をした場合、見えないところで病理医の方がご活躍されているのだ。

患者と直に対面する医師をはじめ、外科医、内科医、画像診断医そして病理医などが集まってその患者についてじっくり話し合い、その人の今後の治療を検討していくのだそうです。

(長くなっていますが)ここまでが、ひとつめのキーワード「個別化」についてです。

*

もうひとつのキーワードが、「低侵襲(患者への負担が少ない治療)」。

最先端の治療法には驚くばかりです。

以前は、大きくおなかを切る開腹手術を実施していた。いまでは腹腔鏡手術が進歩したことによって、大きな傷をつくらなくても手術ができるようになった。単孔式腹腔鏡下手術と言って、体にたったひとつの穴をあけるだけですんでしまうようにもなったそうです。それも、工夫してちょうどおへそに隠れるようにすれば、術後も、傷はまったく目立たない。

ほかにも、自然に体に空いている穴(胃や腸や膣)に細くて長い鉗子を挿入し、がんを切り取りひっぱりだす方法(体に傷をつけない手術)や、ロボット(内視鏡手術支援ロボット)による治療、さらに凍結治療(がんを凍らせる→痛みがなくなる→そのうちに手術をする)なんてものもあるそうです。

患者さんのおなかにはやさしい治療の数々。でも、医師にとっては厳しい治療なのだそうです(だって、これまでは直におなかを見て手術できていたのに、テレビ画面を見て、しかもひとつの穴から道具を通して自由がききにくいなか、がんを取り去らなくてはいけなくなったから)。

*

お話をしてくださった4名の先生はそれぞれ、乳腺外科、一般・消化器外科学、病理学分野、血液腫瘍科の方々。ユーモアを交えながら、私たちにわかりやすいように噛み砕いてお話をしてくださいました。医薬翻訳とつながる部分が多くあり、あの文章はこのことを言っていたのだと、イメージがぱぁーっと目の前に広がるようでした。実際に体験したわけではないからまだ弱いとはいえ、イメージがあるのとないのとではまるで違う。ふわふわ漂っていたものを、手でつかんだときのような。スナップ式のボタンを、パチン! といい音をたててはめたときのような感覚を、今日は何度も感じることができました。

とっても充実した2時間の講座の最後に、司会者(子宮がんを克服された女性)がこうおっしゃいました。

「ぜひ今日のお話を、病理医の先生ってどんなことをしているのかを、だれか3人に伝えてください。知ったことを、広めてください」

だから、忘れないうちに書きました。長くなってしまったけれど、だれか3人の人に読んでいただけるといいなと思います。

| | コメント (2) | トラックバック (0)
|

2012年4月22日 (日)

理化学研究所 一般公開

きのう、「独立行政法人 理化学研究所 一般公開」に行ってきました。

研究所で実施されているさまざまな研究の一端にふれられるとても有意義なイベントでした。

全国各地にある理化学研究所のうち、きのう行った場所は埼玉県和光市にある和光研究所。

朝一番から行ってみようと、9:30に和光市駅で友人と待ち合わせ。そこから特別のシャトルバスに乗り込みました。
バスはぎゅうぎゅう詰め。なかでも、制服姿の中高生さんが目立ち、おしゃべりし合っていてとってもにぎやか。なんだか一緒に修学旅行にでも来たみたいな気分になりました。土曜日だけど、授業の一環だったのでしょうか。それとも、未来の研究者(科学系クラブの仲間たちとか)なのかしら。

到着するとすでに会場は、やっぱり制服姿の団体さんや家族連れや、若者グループからご年配の方までたくさんの来場者でにぎわっていました。

和光研究所は、広大な敷地にたくさんの研究棟が立ち並ぶまるで大学のキャンパスのようなところ。とても自然が豊かで、(もう散ってしまったけれど)ソメイヨシノの桜並木や、いまが盛りの八重桜にも出会うことができ、家から近ければ毎日でもお散歩しに来たいねぇと友人と話しました。

内容はとても盛りだくさん。

物理学、化学、工学、薬学、微生物学、生物学、脳科学、コンピュータ科学、宇宙科学、免疫学、生化学、遺伝学(・・・まだありますが)など多岐にわたる研究分野の一端に、わかりやすく解説されたパネル展示や顕微鏡を使用しての観察、子どもからおとなまで楽しめる体験イベント、講演会など、さまざまなかたちでふれることができます。

専門的であまりにも複雑で、私には理解できないことだらけだけど、ものすごくわくわくするんですね、科学に近づくことは。病気を引き起こす目には見えない小さな小さな体のなかの変化を解明し、治療法を考え出したり薬を作りだしたりするために一生をかけるくらいの気持ちで取り組んでいらっしゃる研究者の方々から直にお話を聞かせていただけることは、この上なく貴重なことなのですね。

「病院での勤務を終えてから、新幹線でここまで通い、研究を進める医師の方もいらっしゃるんですよ」という話を聞いてびっくり。目の前にいる自分の患者をどうにかしなければという思いが、彼をそうさせるのだそうです。費用の面でも、体力の面でも、研究というものはとても厳しく、自分を犠牲にして打ち込みすぎてしまう方々も多くいらっしゃるとのこと。だから、そういうことを頭の隅っこにおいて、ちょっとだけでいい、気持ちだけでいいので応援してくださいねとその研究者の方はおっしゃっていました。

ほんとうだな。病気になって病院に行けば適切な治療を受けられるし薬もいただける。病院にいくほどの不調でなければ、薬局でいつでも手軽に薬を購入でき、症状を緩和させられる。医療によって自分は本当に救われているのだ。

あたりまえのようになっている日常の一部分だけど、ひとつの薬の開発には、研究者の一生が捧げられていると言ってもいいくらいの重みがあるのだ。そのことに感謝するとともに、さらに高度な医療によって、現在病気に立ち向かっているひとたちに新たな光がもたらされることを願ってやまない。

一緒に行ってくださったのは、私と同じ、医薬翻訳学習中の先輩。見学しながら、医薬翻訳の学習とつながる部分も多くあり、疑問やら悩みやらを出しあいながら一日楽しく見学しました。さあ、また勉強頑張ろう~!

| | コメント (4) | トラックバック (0)
|

2011年10月 1日 (土)

国立感染症研究所一般公開

今日は、こういうものに行ってきました。

講演会(薬物耐性菌の話)、体験コーナー、さまざまな展示など盛りだくさんでとても充実した時間を過ごすことができました。

標本展示コーナーでは、寄生虫もいくつか展示されており、数年前に行った目黒寄生虫館を思い出してしまいました。なかには、体長6メートルに成長するものもあるのだとか。こんなものがおなかにいたらと想像すると恐ろしいですが、こうして展示されている寄生虫の姿にはなぜか思わず惹きつけられてしまい、顔をぐんと近づけてしまうのです。

研究者の方が、豚回虫を真剣に見つめていた私のそばへやってきて、寄生虫について熱く語ってくださいました。詳しいことをここに書くのははばかられるのですが、ヒトの場合、どのように体内に入って、体をめぐって、体から排出されて、また感染に至るのか、ということ。ふむふむ、なるほど~。

ほかにも、ワクチン、肝炎、ハンセン病、インフルエンザなどのさまざまなブースがあり、そこにはたくさんの研究者の方が待ちかまえていらっしゃいました。どの方も、見学者を見つけては熱心に語ってくださいます。洋服屋さんで店員さんに話しかけられるのはあまり得意なほうではないのですが、今日はじゃんじゃん話しかけてもらってとても嬉しく、勉強になりました。

最後に、体験コーナーへ行ってみました。

「やってみます?」

どうやら、いつも研究員さんがやっていらっしゃる作業を少しだけ味わうことができるようなコーナーらしい。

「これを着ればもっと本格的にできますよ」

目を向けた先には、作業用の服(つなぎになっていて、素材はレインコートのようなものでした)。

私のほかに客はだれもいない。チャンスだ。こういう体験系のものは大好き。よし、じゃあフル装備でぜひ!

(研究所のお兄さんが、せっかくだから写真撮ってやるよと言って撮ってくださいました)

Photo_2
感染の恐れがあり最大の注意をしなければならない作業では、こんなふうに(この写真だけではわかりにくいですが)するのだそうです。作業するもの一式が入ったケースの中に手だけをつっこんで作業をします。手をつっこむとそのままそれがゴム手袋になっています。手を入れる前にもすでにピチピチのゴム手袋を2重にしているのですが、さらに分厚い(炊事用ゴム手袋の3~5倍くらいの厚さかな)手袋がしかけてあるわけです。

そんな分厚い手袋をしているから、手先がなかなかうまく動かず言うことを聞いてくれない。液体を巨大注射器のような器具を使って、ある容器から別の容器に移し替える作業だったのですが、容器のふたをはずすにもひと苦労し、容器をバタバタ倒してしまうし・・・。

「ほら、液が垂れていますよ! そういうところから感染が・・・」

とも言われてしまいました。難しい~。

研究者の方々は、感染症から人びとを守るため、日々こんなふうに汗を流しながら作業をしていらっしゃるのですね。

ほんの一部を見せていただいたにすぎないのですが、見て、聞いて、話して、触れて、とても勉強になった一日でした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|